2007年01月30日

学習塾の今後のプロモーションの方向性

01/30 IBTimes

[コラム] 教育産業ソリューションシリーズ(第1回:プロモーション)〜学習塾の今後のプロモーションの方向性〜 

出展:日本総合研究所ホームページ(http://www.jri.co.jp/)「研究員のココロ (株)日本総合研究所 研究員 福田 隆士 2007年1月29日付」より


 成長戦略クラスターが取り組んでいる、学習塾をはじめとする教育産業向けのソリューションについてテーマ別に4回シリーズで紹介していきます。


学習塾業界を取り巻く環境

 近年、少子化の進展やゆとり教育の推進などに代表されるように、学習塾業界を取り巻く環境は大きく変化しています。通塾率の増加や一人当たり教育費の増加といったプラス要因はあるものの、少子化という大きな流れの中にあって、市場規模は横ばいであり、成熟期にあると考えられます。
 
このような状況にありながらも年率10%前後の成長を続ける大手企業もあり、優勝劣敗は徐々に鮮明になりつつあります。市場は成熟傾向にありますが、個別指導型の企業は着実に拡大してきており、従来の多数派であった集団指導型の塾は縮小傾向にあります。また、合従連衡の動きも徐々に激しさを増し、最近では名の知れた学習塾の買収も報道されています。
 
厳しさを増す競争環境にあって、学習塾を運営する企業が取り組むべき課題は多岐にわたりますが、自社の取り組むべき課題をすばやく捉え、的確に解決していくことが競争を勝ち抜くためには必須と言えます。競争を勝ち抜き成長していくためにはいくつかのアプローチが考えられますが、本稿ではプロモーションを切り口とした考え方について紹介いたします。


成功要因としてのプロモーションの重要性

 学習塾が成功するための要因としては、講師の質や立地場所の選定など様々なものが挙げられますが、売上拡大に向けて最も重要な成功要因は、プロモーションだと考えます。学習塾の事業フローから考えてみますと(下図参照)、確かに立地場所や講師の質は重要と言えますが、例えどれだけ良い場所にあって良い講師を揃えていたとしても、そもそも存在自体が知られていなかったり、生徒や保護者に通いたいという気持ちを持たせたりすることができなければ、まったく意味を成さないと言っても過言ではないはずです。プロモーションにおいては、業態特性やエリア特性を考慮した広告宣伝の検討や、口コミをいかに活用していくかの検討、価格の設定などが重要となってくると考えます。



費用面から見るプロモーションの取り組み状況

 狭義のプロモーションとしての広告宣伝の重要性は多くの方が認識されていることでしょうが、どの程度注力し、費用をかけるべきかの判断は容易ではありません。ここでは、費用面から学習塾各社がどの程度プロモーションに注力しているかを検討してみます。
 
学習塾を営む上場企業の財務諸表から、売上高に占める広告宣伝費の割合は概ね5%〜15%程度の水準にあることがわかります。CMや屋外広告、雑誌広告などを頻繁に目にする化粧品業界の上場企業の広告宣伝費率は5%〜10%程度ですので、広告宣伝に限れば、学習塾業界は化粧品業界の水準以上に力を入れていると言えます。

 また、各社の費用構造を見てみますと、人件費と広告宣伝費、賃借料の3つが大きなウェイトを占めています。このことからも、各社が少なくとも講師の質と立地、プロモーションの3つについて注力していることが窺えます。


費用対効果を検討する意義

 学習塾の多くがプロモーションに力を入れ、相当の費用をかけていることは学習塾関係者の声からもわかりますが、当然のことながら、ただ費用をかければ成果が出るというものではなく、いかに費用対効果を高めるかが競争力を高める上で重要になります。中堅・中小規模の学習塾では特に、費用対効果について十分把握できていないことも多いようですが、まずは簡単にでも費用対効果を把握することが必要です。極めて単純にすれば、効果は生徒の獲得人数、費用はプロモーションにかけた金額になりますので、生徒へのアンケートなどで容易に捉えることが可能でしょう。

 例えば、チラシにそれなりに費用を割いている場合でも、チラシをきっかけとして入塾する生徒がほとんどいないケースもあるかもしれません。費用対効果を把握することは単に費用が大きい、小さいということを見るにとどまらず、自社にとって最適なプロモーション方法の組み合わせを検討する上でも非常に役立ちます。


プロモーション方法を見直すことの必要性
 プロモーションの方法としては、新聞の折込チラシやCM、屋外広告、車内広告、雑誌広告、DM、電話など様々なものが挙げられます。自社にとってどの方法、あるいはどういった組み合わせが最適となるかを検討することは、生徒確保面、費用面の両面で非常に重要なことです。

 どういったプロモーションをすべきかについては、従来から非常に頭を悩ませることであったかと思いますが、最近はさらに難しくなっているのではないでしょうか。従来型の学習塾のプロモーションはいわゆるマスプロモーションを主体とし、合格実績や講師の質を謳った内容を盛り込んだものが多かったように思いますし、現状でも数多く見られるのはそういった類のものでしょう。しかし、最近増加が著しい個別指導型の補習塾には、いわゆる従来型の学習塾のプロモーション方法はふさわしくないと思われます。

 例えば、懇切丁寧な指導とアットホームな雰囲気を売りにしている個別指導塾において、合格実績を掲載した折込チラシがどの程度の効果を持つかは考えるまでもないでしょう。仮にそのような特徴・強みを持った塾であるならば、生徒を獲得するためには何が必要でしょうか。まず、説明を聞きに来てもらうようにしむける、体験授業を受講してもらうようにしむけることが入り口として重要になります。そして、実際に雰囲気を味わってもらうことが生徒獲得への第一歩となってくるでしょう。

 このように一口に学習塾と言ってもその業態は多様化しており、一律のプロモーションは難しくなっているのが現状です。集団指導形式の進学塾では合格実績を前面に押し出すことが有効であっても、そのほかのケースでは自社の強み・特徴を最大限に押し出せる方法を検討することが肝要であると考えます。したがって、プロモーションを再検討する上では、まず自社の強み・特徴が何であるかの棚卸が必要となってくるはずです。


口コミの変容とその活用の方向性

 ここまでは、広告宣伝を中心に述べてきましたが、学習塾のプロモーションを考える上では、口コミの存在は外すことはできません。実際にまったくと言っていいほど広告宣伝を実施せずに生徒を集めている学習塾もありますし、関係者の方と話をしても口コミがプロモーションの主体であるという意見が多く聞かれます。また、高校生にインタビューした経験からも、やはり口コミの威力は非常に大きいと言えます。ただし、口コミの影響の大きさはわかっていても口コミは消費者が勝手に作り上げていくもので、コントロールは不可能というのが実態でした。根本的な変化を伴わずに、口コミの内容のみを作り上げることできない(してはいけない)ということは今も昔も変わらない部分でしょう。

 しかし、口コミの作られ方、伝播のスピードには変化が見られます。従来の口コミは一人が口コミを伝えられる範囲には限界があり、そのスピードは緩やかなものでしたが、最近では、口コミサイト、ブログ等の普及により劇的に変化しています。コミュニティを活性化することができれば、多くの口コミを発生させることも不可能ではなくなっています。

 口コミサイトの代表例として紹介されることが多い、化粧品の口コミサイトである@cosmeなどは相当数の口コミが集積しており、実際にかなりの割合の女性がサイトを参考にしているようです。従来から口コミの影響が非常に強い業種である学習塾においてもインターネットの活用は有効な手段になりうると考えます。その第一歩として、生徒が意見や感想などを自由に書けるような簡単なブログ、掲示板を作るなど、広告では表現しにくいことを伝えられる仕組みの構築は効果的なプロモーションとなりうるのではないでしょうか。


インターネット活用の際の留意点と活用策

 インターネットを活用して口コミをプロモーションに活かそうとする際には、いくつか留意しておくべき事項があります。第一に口コミの影響はネガティブなものほど感度が高いということです。つまり、そもそもの講義の質など、サービス内容が生徒や保護者にポジティブな印象を与えていないようなケースでは逆効果となる可能性があるので注意が必要です。

 もう一つとして、掲示板、ブログなどの性質の違いを理解しておくべきです。掲示板は誰しもが簡単に書き込むことが可能ですが、その反面、匿名性が高く無責任な書き込み、マイナスイメージを植えつけるような書き込みも投稿しやすく荒れやすいという特徴があります。ブログに関しては、掲示板に比べ場を荒らされにくくする工夫が比較的容易である、通常のウェブサイトに比べて立ち上げ、更新が容易であるという特長があります。

 では、最初の取り組みとしてはどのようなものが良いでしょうか。もちろん、それぞれの考えかた、置かれている状況によって変わってきますが、まずは自社でブログを作ってみることが良いと考えます。自社のブログにチラシやCMでは書ききれないような、生徒や保護者の体験談や講師のコラムなどを掲載することは比較的簡単にできると言えます。また、写真を掲載することも可能ですので、授業風景を掲載することで雰囲気をつかみやすくなると考えられます。学習塾は基本的にある特定の商圏内での競争がほとんどですので、例えば地域のコミュニティサイトにリンクを張ってもらうなどできればプロモーションの効果はアップする可能性も高いはずです。

 その他としては、生徒、保護者の中からモニターを募集し、モニターの方自身が運営しているブログ、参加しているコミュニティサイトなどに講義の感想や様子を書いてもらうなども一つの方法でしょう。最近の小中学生の親の世代にはコンピュータリテラシーの高い方が増えていますので、うまく仕組みを構築することができれば一定の成果が期待できます。

 学習塾各社は前述のように広告宣伝費の割合が高い水準にある業界です。広告宣伝のあり方を見直し、インターネットも巧みに活用していくことが業績向上を目指すうえでの一つの方向性と言えるのではないでしょうか。それにいかに取り組むかということが、今後さらに競争環境が厳しくなっていく学習塾業界において、優勝劣敗を分ける一つの要因となり得るものだと考えます。

※コラムは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。

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福田 隆士
(株)日本総合研究所 研究員 成長戦略クラスター
専門分野:株式上場に向けた構想策定からIR戦略立案や各種実行支援までを含めた株式市場におけるトータル支援
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(01/30 11:14)
posted by 受験オタク at 08:46| Comment(0) | TrackBack(0) | 中学受験事情
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